2012年9月8日土曜日

為替の見方/誰が買っているの?

購買力平価の続いて、中長期の為替のトレンドを決めるものは何かについて考察します。
為替の方向感について、日経新聞なんかの解説だと「ヘッジファンドが仕掛けて…」みたいなことになっていますが、ヘッジファンドは振れ幅を増幅させ加速させるものではあるけれど、自分達が方向をつくる主体ではありません。

ヘッジファンドはもちろん小さい存在ではないんだけれども、銀行ではないので自分たちで好きなだけレバレッジがかけられるわけではなく、金融機関に借入や証拠金取引をお願いする形でレバレッジをかけさせてもらう必要があります。リーマンショック以降、金融機関の体力が著しく低下し、逆により高い自己資本比率を求められている環境では、リスクの高いヘッジファンドへの信用供与は抑えられている状況で、つまりヘッジファンドは昔ほどの大きな金額を動かしていないのです。

そもそも、リーマンショック以前でも、ヘッジファンドは儲けることが仕事であり、マーケットを動揺させることが仕事ではないのです。儲けることが目的なのに、動かないかもしれないマーケット・アタックなんかしないですよ。

急激な為替の動きがあると「ヘッジファンドなどの投機筋の仕掛けで」という思考停止した解説しか新聞には見当たらないのは、適当なコメントをする為替ストラテジスト達のせいであり、書きやすいキャッチーな言葉で語ってくれるストラテジストにしか取材をしないマスコミももちろん悪いのです。

また、いわゆる投機筋の為替取引は、為替そのもので収益を稼ごうという取引であり、ポジションをとれば期日までに必ず反対売買を行う必要があります。よって、売りと買いは同じ金額(=行って帰ってくる動き)なので、こういう取引は大きな流れを作るものではありません。

逆にかえせば、商取引でも投資活動でも、買ったら(売ったら)しばらくその相対通貨のままという片道の取引、そういった資金フローが為替の方向を作っていく上で重要なのです。
たとえば日本の製造業が海外に工場を建設する時の資金の支払い(外貨買い/円売り)、海外子会社から受け取った配当金の円転(外貨売り/円買い)、個人投資家の外株投信買い(ファンドによる外貨買い/円売り)といった動きです。

過去に日本の経済成長の過程で行ってきた海外投資や海外進出の蓄積でものすごい金額の対外資産があります。こういった海外投資の利息や配当の戻り、何かがあった時に円に戻していく金額は膨大であり、今後の成長力はともかく対外資産という意味では世界一の金持ち国家である日本に対しては、相場がどう動こうがそんなこと気にしないで円を買っていく主体が多くあります。
こういった資金フローが円高の流れを作っています。

しかし、経常黒字は徐々に縮小の方向にあり、このまま以前と同じだけの円高圧力があるわけではありません。といってもマスコミが煽るように2〜3年の話というよりも、5年とか10年とか先の話になります。









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