2012年12月26日水曜日

デフレ脱却は可能か?

アベノミクスなる、金融緩和を軸にしたリフレ策に大きな期待が寄せられています。
日本経済は過剰な供給力に対して需要が伴わないことからデフレに陥っているわけで、需要が喚起されていない状態では、いくら強力な金融緩和をしたところで、効果があるとは思えません。

ただし、私は3〜5年の中期的なスパンに立てば、金融政策なんかしなくてもほっておいてもデフレは脱却し、インフレが始まるものと予想しております。しかしながら、それは経済成長によるいい意味でのインフレではなく、悪い意味でのインフレを予想します。

冒頭に申し上げたように、経済は需要と供給で成り立っています。今は供給力が需要を上回っているので、デフレに陥っていますが、日本の供給力は徐々に低下し続けており、このまま供給力が低下すれば、2018年あたりに需給ギャップが埋まるところまで進んでしまうという予想もあります。需給ギャップが埋まるということ、それは即ちデフレがを脱却するということになります

日本の供給力の低下の理由として主に3つの要因があげられます。
一つ目は、海外への生産拠点に伴う産業空洞化があげられます。海外現地法人から輸入額を総輸入で割った空洞化を示す指標は、2000年は7%であったものが、2012年には13%となっています。また海外直接投資残高は2000年末の32兆円から、2011年末には75兆円に増加しています。空洞化は加速化しており、国内の供給力は低下しております。

二つ目は労働人口の高齢化です。2000年の生産年齢人口は8600万人であったものが、2012年には8000万人に。また就業者の平均年齢は2000年の42.9歳から2012年は44.7歳に上昇しております。

三つ目は社会インフラの老朽化です。先般のトンネルの天井崩落事故で明らかになったように、高度経済成長期に建設された日本の社会インフラはかなり老朽化しており、港湾設備、高速道路(とくに首都高速)の老朽化は経済成長の足枷となりうるレベルまでの老朽化が進んでいます。

これら三つの要因による供給力の低下と、米国の景気回復によるドル高円安により経常収支の赤字転落およびその構造化が合わさり、デフレ脱却は数年以内に起きるものと予想しております
そしてこれは構造的な悪材料によるインフレであるゆえに、一度インフレに陥ると国民生活がさらに逼迫していくものになります。

今年は、富裕層であるお客様から外貨の投資比率をあげていきたいという声は増えた年でした。企業経営者であるお客様はこうした流れをいち早く感じとり、早め早めに対策をたてようとされているからかもしれません。




2012年12月25日火曜日

「不連続の日本経済」若林栄四

でました。
チャーチストの大御所・若林栄四氏の新刊。
こういう相場の変わり目になりそうな時期には読んでおきたいですね。
どうしても大手の金融機関の所属しているストラテジストは冒険できないから、今のファンダメンタルズや今の相場の延長でしか物を語ることができず、大きな相場転換を予想することはできないのですよ。
若林氏は「一切のファンダメンタルズを排している」というわりには誌面のほとんどはファンダメンタルズなんだけれども、それはまずはチャート分析ありきで、それがロジカルに成立し得るかを検証している感じですね。「未来に起きること」ありきで、未来のことに後付けで理屈をつけている感じ、と言いますか。
大手金融機関所属の小生がこういう理論を推奨しちゃうと、なかなかよろしくないこともあるのですが、この方の相場予想はキチンと当ててきますからね〜。
一読をおすすめします。




米国のシェールガス革命が他国で起きない訳

米国が景気回復を始める、米国に投資すべきだという提案をする際に、その論拠とシェールガス革命が起きることをあげております。
そうしたお話をする際に、なぜ米国でしか起きないのか、米国経済に中期的にどのようなメリットがあるのかという質問をいただきます。
それに対してウォールストリートジャーナルの解説記事が秀逸でしたので、要旨をまとめてみました。

シェール層は北米以外にも様々な地域で確認されており、世界のエネルギー会社や政府は開発を望んでおります。しかしながら、シェールガスはそもそも採掘が難しく、それを輸出するのは技術的に相当難しく、米国以外の国が生産に至るには10年近くの年月を要するものとみられています

海外での開発が遅々として進まない理由に、政府による鉱物権保有、環境懸念、ガス・石油の採掘・輸送のインフラ欠如がある。また、採掘が1世紀以上行われている米国と比べ、大半の国の地質に関する知識は大幅に少ないこともある。

中国には米国よりも大量にシェールオイル・ガスがあるとみられている。しかしながら問題は、その大半が乾燥地帯や人口密集地にあることである。水圧破砕に必要な大量の水を確保できないほか、水平掘削装置を作るためには誰かの水田を破壊しなければいけない状況である。

一方、米国では1990年代終盤にシェールが掘削された時に始まり、ウォール街は熱心に資金供給を行い、既存の大型パイプラインや多数の掘削リグも業界の追い風となっている。

米国とカナダでは当面。シェール開発における経済的優位を享受する主な国であり続けそうだ。両国では天然ガスやエタンの供給過剰を受け、新たな工場建設に魅力を感じており、生産の海外移転が続いていたここ数年とは様変わりである。


2012年12月22日土曜日

「ビジネスマンのための『実行力』養成講座」小宮一慶

経営コンサルタントとして著名な小宮氏の新刊です。
最近の彼の著書は、今までの書籍で彼が伝えてきたことの焼き直しで、新しい基軸があるわけではありません。しかしながら、小宮氏をプロフェッショナルとして敬愛する私としては、同じ内容を言葉を換えて何度も伝えてもらっているという感覚で、新刊が出るたびに買って読んでいます。
そうすると、前著でも彼が伝えていたけれど、まだ実践できていないよね、ということに直面しますので、自分のディシプリン(行動規範)を反省することしきりなわけなのです。
彼の伝える仕事術はライフハック系の奇をてらった特殊なものではありません。
いつの時代にも通じるようなプロのビジネスマンが身につけていてしかるべきディシプリンを伝えています。
本著でもいいし、もう少し前の著作でもいいので一読をおすすめします。



2012年12月19日水曜日

為替相場は転換したか?

為替市場のムードが変わってまいりました。

衆院選後の今週は狭いレンジ内での動きではありましたが、株の上昇に支えられ、予想されていたようなポジション調整(円売りポジションの解消→円高)もなく、相場つきが変わってきたのではないかという声も多く聞かれるようになりました。

とはいうものの、
クリスマス休暇前の取引参加者が少ないマーケットにおける動きですので、「変わりました!」と言い切ってしまうのはまだ早計であり、まだ難しい状況です。

しかしながら、いくつか材料が「円安トレンドへの転換」の可能性を示唆しております。
(まわりくどくてすいません)

一つは前回の投稿でコメントしました「日米2年金利の差」が広がり始めたことです。
いまのところはレンジ内ではありますが、米国2年金利が上昇し始め、金利差が拡大し始めました
日本の金利が下がっている一方、米国はFRBによる追加量的緩和が見込まれているにもかかわらず、景気の本格回復を織り込む形で2年金利は上昇を始めております。
ここがさらに拡大してくると、ドル買いの動きが加速される可能性がございます。
この感応度は市場環境によって変わってきますので、「何%まで開いたときがシグナルです」的な言い方は難しいですが・・・。

もう一つは、いくつかの抵抗線を抜けて為替の水準として意識されている85円が近接していることです。2010年以降、何回か円安に戻った際に抜けらなかった抵抗線ですので、ここ(85円)をしっかりと抜けてくると、トレンドが変わってきたなという安心感を伴って、もう一段円安にということになりやすいです。

とはいうものの、日銀政策決定会合で何を言ってくるのか、財政の崖の議論の行方はどうなのかなど材料が多くあるため、現在は利益確定をこなしながらのポジション調整が行われているといった格好です。

財政の崖がこのままポジティブなムードで進めば85円ブレークの円安もあり得ますし、
一転してネガティブな報道がされれていったんポジション調整(下値のめどは81円~81.50円)はまだまだあり得ます。

で、結論はどっちなんだ?
という疑問に対しましては、まだ断定的にはいえません。
しかしながら、相場が変わったかもしれないというムードが醸成されておりますので、
80円を割れるような円高の展開はかなり考えにくくなりました

上がる(円安)か上がらないかはまだわからないですが、下(円高)はないでしょう

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2012年12月15日土曜日

当面の為替市場の動向について

ブログ更新にものすごく間が空いてしまいました。
読んでくださっていた方々、申し訳ございません。継続的に頑張ります。

本日は為替について潮目が変わってきた感じもありますので、そこについてコメントします。

安部政権への期待から投機的な円安ポジションが積みあがり、ドル円相場は83円台に突入いたしました。(シカゴIMMの投機ポジションは10万枚に)

投機的なポジション積み上げには巻き戻しがあるので必然ですので、すぐに元に戻るだろうと思っていました。
自民党が週末の選挙で大勝したにせよ、衆参のネジレが継続する夏場までは日銀法改正、インフレターゲットの政策導入などがなかなか前に進まないとの予想から、今度は逆にポジション調整(いったん円高に)の可能性は高いと思われます。

日本サイドの材料だけで動いている相場であれば、ポジション巻き戻しの可能性が非常に高いと思っておりましたが、米国サイドの材料として、12月11-12日のFOMC後の声明を受けて、ドルの下値が固くなったとみております。

FOMC6.5%という完全失業率水準を時間軸維持の主たる条件に据えたことが、大きなインパクトとして受け止められております。
米国経済の完全失業率の低下ペースは着実に進んでおり、同国経済が2%の実質成長率を維持できているという前提で、12ヶ月~1年半程度の期間でターゲットに達する可能性が高いと見られております。

したがいまして、超低金利政策維持に関するガイダンスがこれまでの「2015年半ばまで」から2014年半ばころまで」へ、1年程度短縮されたと解釈が可能になります。

しばらくFRBのバランスシートが膨らむというドル安要因は続くものの、上記の見通しを市場が織り込みはじめ、米国の2年金利が先行して上昇し始めれば、一気にレンジを抜けていく展開も予想されます。(中期の為替見通しでトレーダーは「日米の2年金利の差」を非常に意識しているため)
いまのところ2年金利に大きな反応はないようです。

さらに米国金利が上昇しているということは米国の景気は本格的に回復を始めている証となり、米国景気の回復は世界景気の回復、キャリートレードの再開という流れが予想されます。その際、キャリー通貨として売られるのは金利の上がった米ドルではなく、以前のように円である可能性が高くなります。

円安が進めば日本の貿易赤字も膨らますので、すでにノリシロの少なくなった経常収支の黒字幅がさらに縮小していくことになります。円買いをサポートしてきた大きな要因のひとつが崩れていくのは非常に重要なポイントです。

そうしたムードが醸成されている中ですので、選挙後の週明けにはクリスマス休暇前の利食い・ポジションの調整(=ドル売り)は入るにしても、「実需の買い」「買えていない投資家の買い」などドル買いの材料には事欠かず、80円割れは難しいと考えております。年内81.00くらいまででしょうか。

日本株につきましては、クリスマス休暇明けに海外投資家がドル買い円安方向に動き出せば、それを好感して日経平均がもう少し上昇していく流れも予想できます。

注目は米国2年金利がどこで反応し始めるか、ですね。